2022年12月27日
行動が制限され、人と人とが接触する機会が大きく減らされるなど、新型コロナウイルスによって私たちの生活は一変し、それにともなってビジネスのやり方も大きく変わりました。EC物流業界も例外ではありません。
飲食や小売、旅行業界などでは客足が遠のき業績が大幅に減少しましたが、むしろEC業界にとっては追い風の状況にあるといえます。今回はコロナ禍がEC市場に与えた影響と今後の展望について考察しました。
「EC」の定義と3つの分類
コロナ渦の巣ごもり需要により、EC市場の市場規模が拡大
2021年のBtoC領域のEC市場規模は初の20兆円台に到達!
コロナ渦の影響で世界的にEC市場の拡大が広まる
EC物流の今後の動向①物流代行システムの需要の増加
アウトソーシングするのに可能な業務とは?
物流代行システム導入のメリット
EC物流の今後の動向②非接触・非対面型配送の取り組み
宅配ボックスの設置
指定場所への据置き(置き配)
EC物流の今後の動向③越境ECの拡大と課題
越境ECとは?
越境ECが急速に拡大する理由
越境EC物流の課題とは?
まとめ
「EC」の定義と3つの分類
まずは「EC」についておさらいしておきましょう。ECとは「Electronic commerce」の略で、「電子商取引」という意味になります。インターネット通販、映画や飛行機などのチケットの購入、ホテルの予約、動画や電子書籍の購入など、Web上で行う商取引全般を指しますが、特にインターネット通販のことをECと呼ぶケースが多いです。本記事でもネット通販をECと呼びます。
ECには大きく「BtoB」「BtoC」「CtoC」という3種類に分けられます。BtoBは「Business to Business」の略で、法人同士の取引を指します。BtoCは「Business to Consumer」の略で、法人と一般消費者間の取引のことで、消費者に対して商品を販売するインターネット通販会社やネットショップがこれに該当します。CtoCは「Consumer to Consumer」の略で、フリマサイトやオークションなどを利用して消費者に対して物を売る個人が該当します。
コロナ渦の巣ごもり需要により、EC市場の市場規模が拡大
2021年のBtoC領域のEC市場規模は初の20兆円台に到達!
経済産業省が発表している『令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)』によると、2021年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場の規模は約20.7兆円でした。前年は約19.3兆円、前々年は約19.4兆円であり、前年比7.35%増となっているので、その成長率の高さが伺えます。
BtoC領域のEC市場規模の経年推移(経産省ホームページより引用)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
下表はBtoC-EC市場規模の伸長率を分野別にまとめたものです。特に物販系分野で規模が拡大しています。やはり新型コロナ禍で行動規制が敷かれて買い物や外食に出かけられない代わりにネット通販を利用する人が増加したことが要因となっているのは間違いないでしょう。
BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率(経産省ホームページより引用)
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
コロナ渦の影響で世界的にEC市場の拡大が広まる
日本国内はもとより、世界規模でECの市場は拡大を続けています。ECの利用率が高い米国や中国はもちろん、これまで利用率が低かった発展途上国においてもパソコン・スマートフォンの普及やインフラ整備、そしてコロナ禍によってオンラインショッピングへのシフトが進んでいます。
特に新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、食料品や日用品についてもインターネット通販を利用して購入する人が増え、これまで利用率が低かった高齢者層の利用率も上昇しました。
EC市場が拡大する一方、実店舗は軒並み業績が悪化しています。小売業者にとっては、いかにネットを利用して商売していくか?が今後生き残る上での大きなカギとなるでしょう。
EC物流の今後の動向①物流代行システムの需要の増加
アウトソーシングするのに可能な業務とは?
とはいえ、インターネット通販に参入するのは簡単なことではありません。特に大きな参入障壁となるのが「物流」です。ネットで商品を販売するためには商品を保管・管理する倉庫を設けなければならず、人員も必要です。さらに、適切に物流をまわしていくためにはノウハウも不可欠となります。
そこで、物流業務をアウトソーシングする会社も増えてきています。物流代行システムを利用することで、仕入れた商品の確認やシステムに商品情報や在庫情報を入力する「入荷・商品登録業務」、商品を梱包してお客様へ出荷する「発送」、倉庫にある商品の数量を把握して品質を管理する「在庫管理」といった、物流に関する業務をすべて外部に任せることが可能です。商品を保管・管理する倉庫も業者が所有しているものを使うことができます。
物流代行システムを使えば、ECの大きな参入障壁となっている「物流」をクリアできるのです。
物流代行システム導入のメリット
物流代行システムを導入することで得られるメリットとしてまず挙げられるのが業務効率化とコスト削減です。物流業務ではさまざまなコストがかかり、手間も大きく人手も必要です。規模が大きくなれば物流専任のスタッフを雇う必要があります。
物流業務を外部に委託することで、賃料や人件費などの経費が削減でき、ECサイトの運営や集客などの利益に関わる業務に集中することができます。
また、慣れていない人が物流業務に従事するとミスや事故が発生するおそれもあります。商品や数量間違い、配送遅れ、商品の破損、在庫間違いなどがあるとクレームにつながり、信用が既存されて売上の減少にもつながりかねません。
物流代行システムを利用すれば、スキルや知識がある人材が物流業務を担い、専用のシステムを使って効率的に商品を管理するため、トラブルが発生するリスクを抑えることができます。
EC物流の今後の動向②非接触・非対面型配送の取り組み
宅配ボックスの設置
新型コロナウイルスの感染拡大によって宅配ボックスが普及しました。非接触・非対面型の配送が実現できる、再配達が少なくなり利用者の利便性向上と宅配事業者の労働環境の改善につながる、届いた商品の盗難や紛失を防げるなど、さまざまなメリットがあります。
宅配ボックスが普及することで、対面で荷物を受け取ることに躊躇していた人、外出する機会が多い人も、ECが利用しやすい環境が整ったといえます。
指定場所への据置き(置き配)
据置きとは荷物を玄関先などの指定された場所に置いてもらうことを指します。宅配ボックスと同様に新型コロナ禍で急増した宅配スタイルです。こちらもやはり宅配ボックスと同じようなのメリットが得られます。
特に宅配ボックスを設置できないマンションやアパートなどの集合住宅で据置きを利用している人が多い印象です。
EC物流の今後の動向③越境ECの拡大と課題
越境ECとは?
越境ECとは海外向けのECのことを指します。国内の消費者が海外のECサイトから商品を購入する、あるいは逆に海外の消費者が日本のインターネット通販業者から商品を購入するケースが増えてきているのです。
越境ECが急速に拡大する理由
今、日本国外の消費者をターゲットにした越境ECの市場が急速に拡大しています。日本貿易振興機構が発表している『2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート 調査報告書2021年2月』によると、46.7%の中小企業が「今後海外向けECサイトによる輸出を拡大する」と回答しています。
越境ECが普及する背景としては自国内で手に入りにくい高品質な商品あるいはユニークな商品が安価で手に入れられるということが挙げられます。越境EC利用者は、観光で日本を訪れた際に購入した商品を気に入り、帰国後にECサイトから爆買いするという傾向が強いそうです。
また、新型コロナ禍で国境を超えた移動に制限がかかっているのも大きな要因と言えます。
越境EC物流の課題とは?
インターネットに国境はありませんが、実際に商品を移動させるとなると、さまざまなハードルがあります。まず挙げられるのは配送日数です。国や配送手段(航空便か船便か)によって大きく日数が異なります。
配送中の商品の品質維持も課題です。特に食品や化粧品などは輸送中に消費期限を迎えてしまうかもしれません。輸送期間が長ければ長いほど、破損などのトラブルも発生しやすくなります。
複雑で手間がかかる通関手続きも大きなハードルです。製品によっては輸出できない場合や、通関に時間を要する場合もあります。
物流業務をノウハウがある業者にアウトソーシングすれば、越境ECに関しても効率化やコストダウンを図ることが可能です。
まとめ
新型コロナ禍によって日本国内はもとより世界中でECの市場が拡大しています。今後も通信技術の向上やパソコン、スマホといったデバイスの普及によって、ECの利用率が高まるのは間違いないでしょう。
この追い風に乗るためには「物流をいかに効率化するか?」が鍵となります。物流業務をアウトソーシングすることで業務効率化が図れ、売上げアップやコストダウンが実現できる可能性も大いにありますので、ぜひ選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。