EC物流コストの削減方法とは?コストの種類と経費増加の要因も併せて解説

2023年05月23日

ネットショップの普及によって、ECサイトを支える「EC物流」の重要性も、注目されています。ネットショップを成功させるためには、物流コストをできるだけ削減し、利益率を向上させなければなりません。

そのためには、適切なEC物流代行業者を選び、ともにコスト削減に尽力することが大切です。しかし、EC物流は急激に普及した市場だけに、さまざまな課題を抱えていることも事実です。

この記事では、EC物流のコスト削減の重要性や、コスト増大の要因、物流コストの相場、コスト削減のコツなどについて解説します。

【基礎知識】物流コスト比率とは:コスト削減や利益率改善に重要

  • ・売り上げ全体に占める物流コストの割合
  • ・平均値は5.7%(2021年度)
  • ・売上増加よりコスト削減による物流コスト比率の引き下げが利益率の改善に効果がある場合も

物流コスト比率とは、売り上げ全体に占める物流コストの割合のことを指します。公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の発表によると、全業種平均の物流コスト比率は5.7%(2021年度の数値)でした。

前年度が5.38%なので、0.32%の上昇ということになります。データが残っている2002年から過去19年間を見ても、全体的に上昇が続いているため、今後も上昇することは十分に考えられるでしょう。物流コスト比率が増加傾向にあるのは、物流コストの上昇に伴うものです。

ネットショップの運営側にとっては、利益率の上昇や売上の増加を考えることも重要ですが、物流コストの削減によって物流コスト比率を抑えることも、それと同じぐらい大切な要素となります。

知っておきたい物流コスト増大の4大要因

では、そもそも物流コストは、なぜ増大してしまうのでしょうか?物流コストを増大している要因は、4つあります。現場の3M(無理・無駄・ムラ)、人件費の上昇による値上げ、そして燃料費の上昇による値上げです。それぞれについて、詳しく解説しましょう。

1.現場の無理・無駄・ムラ(3M)

EC物流を含むビジネスの現場で、コストが増大している原因に、「3M(無理・無駄・ムラ)」があります。

「無理」は、離職率の増加などが原因で人員が足りず、作業量がキャパシティを超えてしまう状態です。人手が足りないと、人件費を上げなければならないので、悪循環に陥りがちです。

「無駄」は、作業量に対して人員やスペースなどが余っている状態です。余剰分は余計なコストとなります。

無理と無駄が混在することで、「ムラ」のある現場になってしまい、離職率の増加やリソースの余剰などによって物流コストはさらに増大します。

しかし、これらを改善することは、容易ではありません。「3Mを見つけるのが難しい」と感じている人は、EC物流のプロであるEC物流の代行業者に商品の保管や発送などの物流業務を代行させて、本業に集中した方が効率的でしょう。

2.人為的ミス

ピッキングミスや誤配送といった現場での人為的ミスや、そのためのクレーム対応などの事務処理も、物流コストを増大させる要因のひとつです。

これに対処するためには、IT化によって指示のミスを削減し、ダブルチェックを行うなどの体制構築が必要です。

業務の効率化や正確な作業の実施に力を入れているEC物流の代行業者に外注すれば、代行業者側がそのコストを負担してくれるため、人為的ミスによるコストの増大は防ぐことができます。

3.人件費の上昇による値上げ(2024問題などの影響)

2024問題を目前に控え、物流業界はいまどこも人件費の増大に悩まされています。
2024問題とは、働き方改革関連法が物流業界に適用されることによる影響です。

ドライバーなどが働ける時間が減るため、特に長距離輸送の業者などを中心に、運送業が立ち行かなる可能性があるのです。

2024問題による人件費の増大は、もはや避けられません。そして、これによって起こるコスト上昇も、依頼者側が受け入れるしかないのが現実です。

物流業界を取り巻くコストの現状は以下の記事でさらに詳しく解説しています。
EC物流の輸送費・運送費は値上がり必至!?コスト削減の方法や理由を解説

4.燃料費の上昇による値上げ

ガソリン価格は2021年から上昇傾向にあり、運送費がかかる物流業界としては辛いところです。

ロシアのウクライナ侵攻によって、ガソリン価格は実に3割程度も増加しました。これがどのぐらい大変なことかというと、大型トラック1台の月間の燃料費が、30~40万円ほども値上がりしたことになります。

物流業者はどこも同じように影響を受けているので、ガソリン価格によるコスト上昇は、依頼者側も受け入れざるを得ません。

物流業界を取り巻くコストの現状は以下の記事でさらに詳しく解説しています。
EC物流の輸送費・運送費は値上がり必至!?コスト削減の方法や理由を解説

物流コストの内訳と削減方法&相場

物流コストには、主に在庫保管費、輸送費、荷役費、物流管理人件費があります。それぞれについて、コストの相場と削減方法をご紹介しましょう。

在庫保管費(倉庫料など)

該当するコストの例1. 倉庫の賃借料
2. 倉庫で使用する機械類のリース料や購入費・維持費
 (フォークリフトやハンディターミナルなど)
3. 商品の保管料(EC物流代行業者を利用する場合)
4. 商品の棚卸費用
5. 商品の廃棄費用(廃棄発生時)

在庫管理費とは、商品在庫の保管のために発生する費用のことです。自社に倉庫がある場合は、倉庫の賃借料のほか、倉庫内で使用する機械類(フォークリフト、ハンディターミナルほか)などの購入費や維持費などが、これに該当します。

費用相場は、倉庫の有無や立地などによっても違い、ケースバイケースです。倉庫の賃借料については、都心部の港湾付近から離れて郊外に行くほど、賃貸料が安くなる傾向にあります。

物流をEC物流代行業者に委託している場合は、これらを含んだ保管料(寄託費用)が必要です。棚卸費用や、廃棄費用などが発生する場合も、在庫保管費に計上されます。

在庫保管費のコストを削減するためには、土地代の安い郊外に倉庫を借りると良いでしょう。自社の倉庫だけでなく、代行を依頼する場合も、郊外の方が安い傾向にあります。自社の倉庫がある場合は、機械類の購入費用や維持費、リース料なども見直しましょう。

また、保管する商品の点数によって課金されるEC物流代行業者を活用すると、保管コストを抑えることができます。自社で倉庫を持つと、デッドスペースが発生してしまいますが、代行業者ならその心配がありません。

代行に依頼する際は、ただ借りっぱなしにするのではなく、スペースに余剰が生じていないかを確認し、必要に応じて契約内容の見直しを行いましょう。スペース単位の契約をしている場合は、個数単位の契約にした方が、デッドスペースを減らせるのでコスト削減につながります。

在庫保管費を含む物流コストの種類ごとの特徴は以下の記事でさらに詳しく解説しています。
EC物流代行サービスの内容・費用相場を解説!

また、倉庫の賃借料や保管料の相場観を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
EC物流の倉庫保管料の相場とは?アウトソーシング料の目安をわかりやすく解説

輸送費(運送費など)

該当するコストの例1. 顧客に商品を配送する際の送料
2. 仕入れ等で発生する商品の輸送費(運賃など)
3. 自社で保有する車両の購入費・維持費・リース費用

輸送費とは、商品配送時の送料や、入荷時の輸送費用など、輸送に関するコスト全般のことを指します。自社でトラックなどの車両を持っている場合は、車両の購入費用や維持費、リース費用なども輸送費となります。

輸送費を削減するコツとしては、たとえば物流拠点を分散させる方法があります。関東と関西というように離れた地域に分散させ、より近い拠点から出荷すれば、送料を安くすることができます。ただし、事業規模によっては適さない場合があるので、どちらが得かはよく考えて判断しましょう。

車両関連の費用については、契約内容を見直し、輸送や物流をアウトソーシングすると、費用を削減できます。

輸送費を含む物流コストの種類ごとの特徴は以下の記事でさらに詳しく解説しています。
EC物流代行サービスの内容・費用相場を解説!

荷役費(入荷・出荷・梱包などの諸費用)

該当するコストの例1. 入荷時の荷物積み下ろし費用
2. ピッキング・仕分け作業のコスト
3. 梱包費用
4. 流通加工費(タグの貼り付けやラッピングなど)
5. 輸出入で発生する関税

荷役費とは、入荷時の荷物の積み下ろし費用や、出荷時のピッキング費用、流通加工費など、入荷や出荷の際に発生するコストのことを指します。

荷役の代行業者を依頼する場合の費用は、ケース単位の入出庫料金が10円~、顧客に送る際に発生する梱包出荷料金が500円程度~が相場です。

業者によっては、料金を聞いて安いと思っても、別途システム利用料などが発生するケースもあるので注意しましょう。料金体系は、業者によってさまざまです。

荷役費を削減するコツは、自社に倉庫がある場合、人為的なミスを削減して効率的な人員配置を図るのが効果的です。業務フローを見直し、在庫管理システムなどのITを導入することによって、費用の削減を図りましょう。

EC物流代行業者に物流の代行を依頼すれば、専門家として倉庫の運営を含む物流全般の効率化を考え、IT化やミスを最小限に抑える作業体制の構築にも取り組んでもらえます。代行費用はかかりますが、自社で一から考えて倉庫を運営するよりも、結果的に安く抑えられる可能性は大です。

荷役費を含む物流コストの種類ごとの特徴は以下の記事でさらに詳しく解説しています。
EC物流代行サービスの内容・費用相場を解説!

物流管理人件費(従業員の給料やシステム利用料など諸費用)

該当するコストの例1. 物流管理に携わる従業員の人件費(倉庫内作業員やドライバーなど)
2. ITシステムの利用料(在庫管理システムなど)

物流管理人件費とは、物流業務に携わる従業員の人件費や、ITシステム利用料などの諸経費のことを指します。従業員とは、実際に作業を行う作業員のことです。

物流管理人件費の相場は、会社によってケースバイケースです。傾向としては、関東の人件費は高く、関西など他の地域に行くほど安くなります。たとえば東京と大阪では、人件費の相場に50万円程度の差があります。

物流人件費を削減するコツは、自社で倉庫を持っている場合、できるだけ関東を避けて主要都市以外の郊外に物流拠点を置くことです。ITシステムも一本化することによって、管理がしやすくなり、コストを抑えられるでしょう。

また、EC物流代行業者に物流の代行を依頼すると、人件費は完全に削減でき、人材採用や教育のためのコストもかかりません(EC物流の人件費削減のコツは以下の記事でさらに詳しく解説しています)。
EC物流で人件費を削減するための重要なポイントとは?

ITの導入費用は代行業者でも発生しますが、自社で一からやる場合とは違い、すでに効率的な運用体制が構築されているシステムを利用できるというメリットがあります。費用対効果が高いので、結果的にコスト削減につながります。

ITをこれから導入する倉庫の場合は、自社で導入すると先行投資が必要になり、かなりの経費がかかります。ITの専門的な知識がないと、システムの選定に失敗するリスクもありますが、代行業者を使えば自社でリスクを負わずに済みます。

コスト削減にはEC物流業代行業者がおすすめ!依頼先選びのポイント5選

EC物流のコストの種類についてご紹介しましたが、実際に依頼するとなると、いったいどんなEC物流業代行業者を選んだらいいのでしょうか?代行業者を選ぶ際のポイントについてご紹介します。

EC物流のコスト削減を考えるなら、自社で何とかするよりも、EC物流業代行業者に依頼するのが最も賢い方法でしょう。

EC物流業の代行業者は、EC物流を専業としているため、IT化による効率化やミスを防止する体制構築など、さまざまな取り組みを行っているからです。

代行料金はかかりますが、その代わりにスペースや人件費、ITシステム導入費用などの諸経費を抑えたりゼロにすることができ、結果的にコストの削減につながります。

1.複数拠点を持ち関東以外にも拠点がある代行業者を選ぶ

代行業者を選ぶなら、関東だけでなく、それ以外の地域にも複数拠点を持っている業者を選びましょう。

なぜかというと、2024問題によって今後は輸送費のコスト上昇が予測され、特に長距離輸送のコスト上昇は深刻です。拠点を分散させて、できるだけコストを抑えなければなりません。

EC事業が小規模な場合は、関西などに拠点がある代行業者を選ぶと、人件費や土地代が安いというメリットがあります。

EC事業が拡大し、配送コスト削減のために多拠点を設けたいという場合は、複数拠点を分散させて持っている業者を選ぶと効率的です。

自社で倉庫を運用するとなると、拠点ごとに人件費がかかりますが、代行業者は一定の利用料を払うだけで済みます。複数の拠点を整備するという大変な作業もなく、それによってコストが増加する心配もありません。

2.郊外に倉庫がある代行業者を選ぶ(※ドレージ輸送の範囲内で)

郊外に倉庫がある業者を選ぶのも、代行業者を選ぶ際の大事なポイントです。主要な港湾付近の倉庫など、都心部の倉庫は土地代が高く、今後も賃借料は高騰することが予測されます。

EC物流代行業者の賃借料は、そのまま利用料に反映されるので、郊外に倉庫がある業者を選ぶことでコストを抑えることができます。たとえば関東なら、東京ではなく埼玉を選ぶといった形です。

ただし、輸入商品を取り扱う場合は、注意が必要です。輸送されたコンテナをドレージ輸送しなければならないので、ドレージ輸送の料金が変わらない「100km圏内」の倉庫を選ぶ必要があるからです。

たとえば東京港でコンテナを受け取る場合、埼玉の倉庫なら100km圏内なので、同一料金で利用できます。

3.作業のIT化・システム化に力を入れている業者を選ぶ

代行業者を選ぶときは、作業のIT化・システム化に注力している業者を選びましょう。物流コストを削減するためには、在庫管理システムなどの物流のITシステムを効率化し、人為的なミスを防止する必要があります。

そのため、IT導入や倉庫のシステム化に注力している代行業者を選ぶことで、誤発送などの人為的ミスによるトラブルやクレームを削減・防止でき、物流コストを削減することができます。

柔軟な対応をウリにしている業者を選ぶ

EC物流代行で避けられがちな条件1. 小ロット
2. 多品種小ロット
3. 規格外の商品(サイズ・従量)
4. 流通加工が多い
5. イレギュラーな対応が多い
6. SKUが多い

柔軟な対応ができる物流代行業者を選ぶことで、EC物流で避けられがちな条件をもっていても、スムーズに対応してもらうことができます。

ネットショップの中には、多品種小ロットの商品を扱っていたり、規格外の商品を扱っていたりする場合があります。いま扱っていなくても、今後扱う可能性があるというケースもあるでしょう。

しかし、業者から避けられやすい条件を満たしている場合や、自社の与信が低い場合は、物流代行業者から契約を断られてしまうケースもあるのです(詳しくは以下の記事で解説しています)。
EC物流で業者に断られた原因と対処法!良心的な業者を探すコツも解説

その点、柔軟な対応を売りにしている業者を選べば、その心配はありません。物流代行業者は、柔軟な対応を謳っている業者か、避けられがちな条件に対応していることを明記している業者を選ぶとよいでしょう。

5.トータルの作業料金が安い代行業者を選ぶ

物流代行業者の中には、「保管料〇円」というように一部の金額を目立たせているケースもありますが、実際に重要なのはトータルの作業料金です。実際に毎月いくらかかるのかを調べ、トータルで安い業者を選ぶことが大切です。

物流代行業者の料金体系は、「保管料」のほかに、「入庫」「出荷」「検品」「システム利用料」などがあります。これはどこの業者も同じで、さまざまな作業の手数料がかかるシステムになっています。

1つ1つの手数料が安く見えても、実は手数料が細かく定められていて、トータルで計算したら他社より高かったというケースも少なくありません。逆に、個々の手数料は高くても、項目が少ないため、トータルで計算したら安かったというケースもあります。

物流代行業者を選ぶ際は、自社の例に当てはめて細かく計算し、トータルで料金が安い業者を選択しましょう。

物流コスト削減を考える際の注意点

物流コストの削減方法について解説しましたが、コスト削減にあたっては、注意しなければならないこともいくつかあります。闇雲にコストカットに走っても、いい結果は生み出せないので、次のことに留意して冷静に判断をすることが大切です。

1.値上げによるコスト増加は完全に避けられない

どんなにコスト削減のための努力をしても、絶対に無理な状況というものがあります。それは、値上げによるコストの増加です。

その場合、物流業界はどの企業も値上げ幅を抑える努力をしてはいるものの、やれることには限界があるでしょう。

残念ながら、人件費と燃料費の増大に起因する値上げは、受け入れるしかない段階にきています。これまで業者側もかなり努力をしてきましたが、もはや限界の状態です。

いま値上げをしていない企業は、依頼先にとってはありがたい限りですが、今後数年以内に倒産してしまう可能性も否めません。そうなると、依頼者側は急遽新しい事業者を選ばなければならず、混乱は目に見えています。

値上げ自体は現実として受け入れ、その上でできるだけ値上げ幅が低くなるよう、企業努力をしている物流業者を探しましょう。サービス内容を充実させるなど、価格を切り詰める以外のことでがんばっている業者を選び、長くいい関係を築くことが大切です。

2.物流拠点集約化の意外な落とし穴

2024問題が迫る中、長距離輸送のコストは、最も増加する可能性が大です。そのため、代行先も含め全拠点を集約化してしまうと、コストが増加するリスクは大きいと言えます。

また、日本は災害大国なので、いつどこで大規模な自然災害が起こるかわかりません。日本でビジネスをするからには、関東と関西といったように物流拠点を分け、有事に備えたリスク分散をするのがベストの方法でしょう。

全国配送を行っている会社であれば、拠点を分けることで配送料も削減できます。人件費も関西の方が安く、さまざまな点でコスト削減効果が期待できます。

ただし、自社で複数拠点を持つと人件費などが膨大になってしまうため、代行業者に外注して拠点を整備することをおすすめします。

まとめ

EC物流のコスト削減は、ネットショップを運営する方々にとって、非常に大きな課題です。自社で何とかしようとするよりも、適切なEC物流代行業者に委託し、物流コストを上げる要因をできるだけ少なくしてコスト削減に努めるのがベストな方法です。

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